イラストレーターの木内達朗氏の作で、福音館の「ちいさなかがくのともシリーズ2月号」として2009年に初版され、その後にハードカバーで再出版された絵本です。お父さんと息子の親子がいろんな乗物でお出かけする様子が描かれている。なんと言っても表紙がロープウェイというのが嬉しい。パノラミックウィンドーのいかにも昭和な搬器のデザインが魅力的である。
この山麓駅の絵がとても魅力的である。ロープウェイ独得な階段のホームは、その傾斜から高いところに上っていく期待感があって、これからコレに乗るんだというワクワク感が絵からも感じ取れる。この山麓駅は千葉県富津市の鋸山ロープウェーがモデルになっている。実際の切符売り場は建物の中にあり、搬器も別の場所のを参考にしているようであるが、あえてモダンなデザインの搬器にしていないことで、のんびりした観光地の雰囲気を表わせていると思う。
そしてこの風景もまさしく鋸山です。自分は鋸山ロープウェーの大ファンなので、この絵を見るだけで海からの風までも感じ取れるようである。独特のやさしいタッチでありながらロープウェイの細部も正確に描かれている。実際の鋸山ロープウェーとはデザインがちがうので、リアリティーと空想の両方が溶け込んでいて楽しい。夏休みの家族全員の大旅行とかではなく、お父さんと二人きりで出かけた小旅行で乗ったロープウェイ。さりげない非日常が意外と思い出に深く残っていたりするのである。