これは1951年7月に発行された「小学三年生」で引出口絵として紹介されたものである。絵の作者は浜康雅氏。これは栃木県にある明知平ロープウェイをモデルにしている。1955年頃から本格的なロープウェイが日本中に建設される前は「ロープウェイ」を「空中ケーブルカー」と呼ぶことが多かったので、ここでも「くうちゅうケーブルカー」という名称になっている。明知平ロープウェイは戦前の1933年に開業して、戦争の不要不急で一度廃止にされたが、戦後すぐに元の場所に整備されて1950年10月に再開した路線である。この号の発売はそれから9ヵ月しか経っていない。下に鋼索鉄道のケーブルカーが描かれているが、戦前から1970年まで実際に馬返駅から明知平駅まで存在している。そしてその駅舎でもあったかまぼこ型の屋根の建物も描かれている。ただしロープウェイもケーブルカーも位置関係は空想で、この絵で見られる華厳の滝らしき風景もロープウェイからは実際は見えない。そして低い方が起点だとすると、1号車と2号車の位置が逆である。...といろいろ突っ込みたくなるところは多いが、子供にロープウェイという乗物を紹介するのが目的なので、事実関係はどうでもよい。2号車に乗っている引率の先生と子供たちの楽しそうな描写が素晴らしい挿絵である。
小学三年生 第六巻第四号 昭和26年7月1日発行 株式会社小学館 挿絵 浜康雅 当時の定価 80円 |
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